エレベーターの前で胸を刺された男が犯人の名を言い残して絶命。その名指しされた男がエレベーターで最上階へ向かうところを目撃される。再度降りてきたエレベーター。扉が開くとそこには血まみれの男の死体。最上階を調べると誰もおらずエレベーターしか下の階に下りる方法はない。時は金曜の夜。場所は出版社のビル。電話は不通になり、非常口は封鎖され、ビルは大きな密室。閉じ込めれらた8人の中に犯人がいるのか。しかし、どうやって…?
論理と推理を重んじる本格推理では時に「パズル小説」と呼ばれる本があります。小説としての物語があまり機能せず、事件のパズル性についてどっぷり語るものと言いますか。この本もまさにそんな「パズル小説」。ビルの大きな密室の中で、上下に移動する密室がある入れ子構造。ここに存分に謎を仕掛け、伏線も張り、読者への挑戦まで挟む楽しみよう。
しかし思うに、「パズル小説」は読者で途中で仕掛けや犯人がわかった(もしくはわかった気になった)時に真価が問われるんじゃなかろうか。「その仮説はいいから、この人はあの時どうだった?」みたいに、考えが先回りして落ち着かない。では小説として楽しもうとしてもそれもどうにも弱い。やきもきしながら最後まで読むとやっぱりその通りだったりして、だから言ったのに的な残念な感じが出てしまう。読者が謎を解けるように設計したゆえに、読者が謎を解くと話が色あせる危険がある。この危険をもっと回避できたらなぁと思った。
あとはビルを閉鎖状況にするのが無理無理で、なかなか大変なことになってるのが見所。閉じ込められた人々は全員携帯電話を持っておらず(営業部員までいるのに!)、防犯上の理由から1階と2階の窓は全て鉄格子がはめられ、ビルに一つしかない避難梯子は犯人によって持ち出され、誰も消火栓の非常ベルを押して助けを呼ぼうと考えないという、消防法を全く無視した出版社になってます。えらいこっちゃ。
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