山田ズーニー『おとなの小論文教室。』

ほぼ日刊イトイ新聞 – おとなの小論文教室。の書籍化第一弾。長らく受験生の小論文を教えてきた著者が、自分を表現力したいおとなのためにちょっと背中を押すコラム26本。

3章に分かれていて、第1章で「問い」「要約」「世界観」など自己表現するためのヒントを提供し、第3章では「一人称がない」人々を巡って読者と考察していく。わかりやすい言葉でぐいぐい伝わってくるし、1本終わるごとに一回本を閉じて自分について考えたくなる。しかし、それにも増して、僕にとっての白眉は第2章『自分の才能って?』だった。

第2章では「自分のやりたいことはなにか?」「自分は何になりたいのか?」という問いに向き合い、「才能は自分の中にあるのではなく、他者/社会の中にある」と逆の着想を持ってくる。自分のやりたいことを自分で考えるのは、逆に「他者」とのつながりを断ち切るのではないかと。自分の中でぐるぐると考えず、ひらき、受け入れるのだと。「自分はどこにいきたいのか?」という思考の壁にちょろりとロープを足らすのだ。開放し外を見るという視界の逆転に、目からウロコが、と言うよりはよりゆっくりと、ジワジワと言葉が体の隅々にいきわたるような体験だった。

タイトルからすると、文章書きのハウツー本に見えるかもしれない。しかし、この本は自分を表現するという事の絶大なる効果を説き、かつ、読んでる側をその気にさせるに十分な力を持っている、「自分を生きる方法」のハウツー本なのだ。「やりたいことが見つからない」という人に特におススメしたい。伝えたい。話しがしたい。たとえ届かなくても、僕は僕の声を出すのだ。

【関連書籍】
『理解という名の愛がほしい??おとなの小論文教室。II』
『17歳は2回くる おとなの小論文教室。III』