道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

終業式の日、学校を休んだ同級生・S君の家に寄った主人公は、そこでS君の首吊り死体を発見する。慌てて学校に戻り先生に事情を説明。しかし先生と警察が駆けつけると、S君は消えていた。部屋で一人、困惑しているとS君の声がする。そこには一匹の蜘蛛。S君の声は、自分は蜘蛛になって生まれ変わったと言うのだ…。

同様の手法をつい最近見たので、どうしてもインパクトは減ってしまう…。主人公たちの行動の原点となる「推論」がどうも頭に入ってこないので、最初は主人公の家や担任教師の”キモイ”描写に目がいきがち。ホラー寄りの人でもあるし。

で、これが後半になるにつれ、あちこちの線が半ば強引に集まり始める。筋を通すために手段を問わない繋ぎぶり。最初に本筋ありきでそれに近づけていく方法論ではなく、この収拾の付かない事態に蹴りをつけるために物語が暴走してます。あーあーえらいこっちゃー。眩暈による胸のむかつきをずっと抱えたまま読んだような、独特の読後感です。