米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』

夏期限定トロピカルパフェ事件
米澤 穂信
東京創元社 (2006/04/11)

小鳩くんと小山内さんの二人の高校生が、中学までの己の特性を隠してつつましく”小市民”を目指す『春期限定いちごタルト事件』の続編でございます。緊張の夏、小市民の夏。

夏休みスイーツ巡りに伴う日常の謎、という形で進んでいく序盤から、後半から大事件に発展する急展開、さらに終章での謎の収束と二人の対話。ページ数にして200Pちょいなのに、この密度たるや、まさに濃厚なスイーツ!こんなに薄い圧巻があっただろうか。

探偵役はもうやりたくない「狐」と、復讐の暗い悦びを忘れたい「狼」。小市民になるために、感情の発露をおさえてきた末の通過点。二人の内なる歪みが走り出す本作は、ぜひ前作から続けて読むことをおススメします。この夏は、甘くない。