伊坂幸太郎『砂漠』

「鳥瞰型」の主人公・北村、やませみ頭のブルジョア・鳥井、陽だまりの超能力者・南、リアクション薄の超美女・東堂、そして前進前進また前進の演説男・西嶋。四月、仙台の大学に進学した5人。麻雀をきっかけにして始まる、あっという間の学生生活。

参った。余韻に浸りすぎです。「5人の青春群像」とか書けばそのまんまなのですが、とにかく登場人物たちへの愛着の沸き方が半端じゃない。朝、通勤電車の車内で途中まで読んで、その後会社で仕事しているとき、ふと「あいつら今頃どうしてるかな」と思ってしまうくらい彼らが好きになる。何気ないやり取りや行動の一つ一つが彼らを作り、本の中に命が吹き込まれている。出会ったら二次会までは確実に行きたい。最低2半荘はやりたい。

「春」の章から始まる物語で、幾つかの事件に巻き込まれながら、その一方で普通に暮らしながら、喜怒哀楽を繰り返し、彼らの四季は過ぎていく。これはね、いいですよ…。ほんとに…。しみじみ言うけど。読み終わって余韻に浸るとき、ラスト近くに作者が施したちょっとした仕掛けが、また物語を奥深くさせてくれるのだ。

この話舞台が仙台なんですが、僕も仙台で学生時代を過ごしたこともあり、いろいろと光景が懐かしい。これは宮城野区のほうだなとか、この歓楽街は国分町だなとか、青葉通りと東二番丁がぶつかる交差点の地下の噴水とか出てきますよ。ちくしょう八木山に住めよ、とかつっこんだり。2倍楽しめます。

それにしても伊坂幸太郎の作品ってRV車=悪者率が高い気がするのは気のせいでしょうか。