ブルボン小林『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』

ブルボン小林って誰やねん、と思ったら、『もうスピードで母は』『泣かない女はいない』の芥川賞作家・長嶋有。ゲームについてのコラム本なのですが、観点が新鮮でとてもおもしろい。

結末ではなく道中を楽しむ『かつてゲームは観光だった』、スーパーマリオがゲームを地上に誘った『青空の下』、カラテカのあの演出はそうだったのか『一方そのころ敵は』などなど、80年代にゲームに夢中になった子供が大人になってふと「あれはあぁいうことだったんだなぁ」と振り返る視点で、発見に満ちているのだった。昔のゲームは容量の関係で背景が黒ばっかしだった。そうだよなぁ、マリオ以前で背景が青空ってなんだったかなぁ、F1レースとカラテカぐらい?とかベースが共有できるので余計面白かった。

あと個人的にはRPGについての話が少なく、アクションやシューティング寄りなのがうれしい。好みがもろかぶり。『かつてゲームは観光だった』に出てくるゲームなんて、「スカイキッド」「シティコネクション」「ゼビウス」「スターフォース」「斑鳩」「ファンタジーゾーン」である。わかるわかる。「タモリは名古屋撃ちがうまい」とか、微妙な知識が増えていくのも心地よい。

「振り返る大人の視点」なので、ゲームに興味がない人にも「ゲームって(もしくはゲーム好きって)こういうことだったのか」という発見もありそう。80年代~90年代初めに子供時代を過ごした方は手にとってもらえると、あのファミコンブームを今一度ゆっくりと味わうことができると思います。ゲーム語りを大人のたしなみに。