水道橋博士『本業―タレント本50冊・怒涛の誉め殺し!』

水道橋博士『本業―タレント本50冊・怒涛の誉め殺し!』はタレントによるタレント本書評。日経エンタに連載されていた「本と誠」をベースに、著者がタレント本に書いた解説をボーナストラックとして収録。『お笑い男の星座』(→感想)でも発揮した水道橋のルポライター気質がここぞとばかりに大奮発。

普通の書評と一線を画く目的で交流録や現場の裏話も多く含まれており、そのため本のセレクトもちょっと偏っている(本のカバーに取り上げた本が全部書いてあります)。次は木村拓哉『解放区』に、という編集者のオファーを断って山田かな子『せんせい』にしちゃうくらいである。その分、好きな人・好きな本を取り上げているので、語り部は生き生きと、絶妙に引用し、笑わせ泣かせ感嘆させ、最後にすっと差し出して薦めるのだ。これが1冊あたり4ページでぎっしり。芸能知識の満腹中枢にて針が振り切れるほどの満足感です。

タレント本なんて結局売名行為や金儲けの一手段でしょ、と正直思っていたのだけど、『本業』を読んでちょっと思い直したなぁ。激ヤバエピソードだったり思わぬ文才があったりで、テレビや雑誌では語られない芸能人の等身大を映す、まさに「確定申告」。タレント本はメディアで表から見る芸能界の、その裏を覗き込む鏡でもあったのだ。水道橋博士の案内で行くタレント本の世界。ご堪能くだされ。