いとうせいこう・奥泉光・渡部直己『文芸漫談』

いとうせいこうと奥泉光が実際に舞台の上で行った文学漫談の活字化。副題に「笑うブンガク入門」とある通り、文学のエッセンスを漫談形式で時にわかりやすく、時にややこしく、時に奥泉光の大ボケで語っていくのが面白い面白い。文学というのはこういうことを考えて論じるんだ、という、「文学」に触ったことがない自分には多くの示唆に富んだ本。これはいい。

いとうせいこうは属性的にはツッコミなんだけど、勢い頭がキレるだけに全てのものにツッコムため、相手がみうらじゅんやシティボーイズ等の「大ボケ」でないと空回りして見えてしまうのだけど、奥泉光の「ボケる時は大きくボケるけど、語るときはしっかり語り、最後にちょっと踏み外す」というスタンスとの距離感がベストマッチ。保育園で泣きすぎ。セカチューを嫌いすぎ。

こうなると残念なのが脚注の渡部直巳で、本文にツッコミを入れたりボケたりと、脚注なのに読者の方を向かずに舞台の方ばかり見ているので、ホントに「入門」として接することになった者としては用語とかもっと注を入れて欲しかったところ。トリオ漫談はポジションが難しい。

「小説」「書く」「読む」「語り手」「物語」「泣く」「ユーモア」…キーワードを繋ぎ俯瞰し構造化しながら紐解いていく。読み終わると、なんか小説を書きたくなってしまうという副作用も生じる一冊。だって二人はこう言うのだ。

「世界を二重化して見ることが、元気の素なんだ」