浅草キッド『お笑い 男の星座2 私情最強編』

浅草キッド、入魂の人生劇場第二部。前作に引き続き、芸能界の超人・怪人・熱狂・狂気を熱い文章で描き上げる。芸人とは、芸とはを追求する浅草キッド、熱気を通り越して臭気すら漂うこの情熱は生半可ではない。鈴木その子の美白の裏、寺門ジモンが隠し持つ人類最強のカード、変造免許写真事件の顛末、そして圧巻は江頭2:50が生死を賭けた水中企画”江頭グランブルー”。水の中で息を止める、というだけの企画のはずなのに、芸に賭けるその生き様に最後は号泣必至。情熱とセンチメンタルを行き来する浅草キッドの書き味は一度捕まえられたら逃げられない。最高最強の馬鹿は実在するのだ。興味を持った方は水道橋博士の「博士の悪童日記」もご覧あれ。

この本、序章の「一騎イズム」で文芸春秋の担当編集者に浅草キッドが詰め寄るシーンから始まる。出版不況を理由に初版部数を減らそうとすに編集者に怒り心頭の浅草キッド。第一部は全国各地で手売りまでして部数を伸ばした二人が出版界に喝を入れる、その台詞を一部引用して終わろう。

「言っとくけどオメェらはそんなこと言って守りに入ってんだよ。まずは、ええいままよ!と100万部刷ってから、その後、売り方考えるくらいの発想しろよ。だいだいケツに火がついてからじゃねぇと、新しい販売戦略なんて考えられねぇだろ」
「あのねぇ、本が売れない時代じゃないんだよ。作家の本人に自分で売る気がないだけなんだよ。作家が書斎に引き籠って、自分が脱稿さえすれば出版社が売ってくれると思っているから『本が売れない』『若者の活字離れだ』って大袈裟にため息ついてるだけなんじゃねぇのか?」(P.13)