米澤穂信『愚者のエンドロール』

古典部シリーズの2作目。収穫。これは収穫だ。安孫子武丸『探偵映画』、バークリー『毒入りチョコレート事件』を意識したとあとがきで触れられている通り、一つの事象に幾つもの推論を重ねていく展開なのだが、これに主人公・折木の「探偵の自覚」に発火をさせ、探偵の誕生と謎解きのジレンマを交錯させ、それを青春ミステリとして形作るという偉業。shakaさんも書いていたがホント志が高い。このページの薄さの中に幾つの手がかりと伏線が散りばめられていたことか。

ただ『探偵映画』の時も自分はそうだったのだけど、作中人物が映像で観たものを文章で表して推論を重ねていると「なんでもあり」感が出るせいか緊張感が薄れてしまう。また、折木の一視点であり、周辺人物がポイントで絡む印象だからか、もっと厚みを!と食い足りない。

でもまぁそれは欲というもの。スニーカー文庫でここまでやったらいいでしょ!途切れたフィルムに、灰色の日々に、ピリオドを打つ物語。