エラリー・クイーン『シャム双子の謎』

ニッポン硬貨の謎を読む前に必須、という話を聞きつけて読了。実は国名シリーズは全て未読。またシリーズものを途中から読んでしまった…。

山火事に追われて山頂の山荘に飛び込んだクイーン父子、怯える人々、異形の研究者、”骸骨”、”蟹”、そして殺人。迫り来る火事に囲まれたクローズドサークルで、火の手が迫るタイムリミットがサスペンスを盛り上げ、一方殺人事件の検証はトランプや指輪といった小さな証拠をこねくり回す。火事の恐怖と殺人の恐怖。外の内のスケール感の違いが味でもあり弱点でもある(「そんなことしてる場合か」的な)。ダイイング・メッセージものは解釈が多岐に渡るためロジックに不安を覚えることが多く、本作も例外じゃないのだけど、ダイイング・メッセージがどう残ったかという外枠を二転三転させる企みに唸る。外と内、枠と中、観察者と実行者。迫る業火に燃やされるのは人か、罪か。

シャム双子の謎
シャム双子の謎

posted with amazlet at 05.08.27
エラリー・クイーン 井上 勇
東京創元社 (2000/00)