石持浅海『扉は閉ざされたまま』

ドアを破らない密室もの!

久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができる―)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。

本格推理はこんなことができるのか。密室状態を破ることなく進む犯人対探偵の倒叙もの。彼はなぜ部屋から出てこないのか、という疑問をベースに知と知が生み出すこのスリル。推理の穴や動機の腑に落ちなさはともかくとして、ここは思考遊戯の極みを楽しみたい。いやー、面白かった。