小路幸也『Q.O.L』

「殺したいやつがいるんだ。」
殺し屋だったという父の遺言で、拳銃を昔の相棒に届けることになった龍哉。同行を申し出た同居人の光平とくるみには、その拳銃を使って「やりたいこと」があった。3人の思惑をのせてサンダーバードは走る。新鋭が描く、痛みと癒しの青春ロードノベル。

拳銃と車を手に入れた若者三人のロードノベル、と帯で見て、暴力かハイテンションかと思って読み始めたら、穏やかでニュートラルで、そしてとてもクレバーな話だった。

三人それぞれが親兄弟にトラウマがあり、それはとても深く暗いのだが、ただ荒れる時は過ぎ「信頼できる仲間」という安息を得てから物語が始まるため、躁すぎず鬱すぎずのキャラ造形がとても大人に映る。かといって物語に起伏ないわけでは全然なく、ロードノベルの道から外れだしてからの展開は予想を上回る着地点でほぅと嘆息。いい!

Quality Of Life,Quest Of Love. 冷えすぎず熱すぎず、僕は僕の声を聞く。